調墨と筆洗の重要性

調墨の目的・・・一枚の絵の中で「安定した墨色を出す」ため。そのために、「墨色の基準色」を作ります。
調墨のやり方・・・小皿に適量の水をとり、濃墨を筆にとって小皿に混ぜます。
             通常は中墨色と淡墨色の2段に作ります。

同じ墨色を再現するために・・・一塊の絵を描き終えたら、筆を良く洗い、穂が含む水を全てふき取ります。
描いては洗い・拭く、描いては洗い・拭く・・・それが安定した墨づかいの秘訣です。
道具の配置・・・・そのために、道具の配置が図のように整然としていると、描き易いのです。描き易く道具を配置します。
             筆拭きは、左手に持っていると、使いやすいでしょう。


「調墨と墨づかいの重要性について・・・グラデーションが基本で、滲みは水のイタズラ」

初学者にとっては、墨色を安定して出すことは困難なことです。
  ・・・墨の性質や調墨する理由を理解して、描くようにしましょう。
  ・・・先生の手本を真似るだけでは墨色はでません。
  ・・・調墨の仕方を教える本は多いのですが、普通、なぜそうするのかは書かれておりません。
初学に多い誤り:
・筆をよく洗わないこと、洗っても筆の水をふき取らないことです。
・筆に水が残ると、墨色が薄くなるばかりか、折角調墨した色よりもずっと薄い色まで墨色が変化し続けます。
・薄い色に濃い色が交わったときには、不要な滲みが発生します。
・中墨に濃墨を引っ掛け描いた場合、描き続けると「中墨色」まで黒味が変化するのが普通です。淡墨に濃墨を含ませたときは、淡墨まで墨色が変化します。しかし、余分な水が筆に残っていると、どこまでも墨色が変化するということです。
 
■同じ墨色を再現するために・・・一塊の絵を描き終えたら、筆を良く洗い、穂が含む水をふき取ります。
■描いては洗い・拭く、描いては洗い・拭く・・・それが安定した墨づかいの秘訣です。
水墨と書の違いはここに!
・水は前に使った筆中の墨を洗うためです。・・・・墨色を調節するためではありません。
・過度の水は墨色を損ないます。・・・水を筆から丁寧にふき取ってから、中墨や淡墨を使います。
・薄い墨色が必要なときは、もう一枚皿を増やして薄い基準色を作ればよいのです。
・注意したいのは、少し慣れてくると、洗い・拭くことが面倒になって、小手先で墨色を作ろうとしがちになります。
 ・・・たった一筆の墨色のミスで、絵を台無しにすることも多いのです。

調墨と筆の水含みを取ることが、墨色安定の秘訣です。
 ・水墨画は、滲みの絵と古来から表現されますが、順大流は滲みを出す前に「墨の濃淡を自在に出す」ことが基本と考えます。
 ・滲み(水暈)は、墨と水がであったときに出る偶然の結果です。
  達人になれば偶然を味方にできますが、まずは調墨色を正しく使って、墨色を味方にしましょう。
 ・濃淡を安定に出せれば、順大流の逆の描き方で、随時滲みが作れます。
  ・・・繰り返しますが、滲みは工学的に見ますと「水のイタズラ」なのです。

解説:水暈墨章ということ
 初期の水墨画は書家が中心であったため、水暈墨章といって「滲み」を尊んだようです。絵画の観点からしますと、墨色の濃淡変化が基本であることが忘れられているように思います。


■解説:「小手先の墨づかい」について
 折角調墨して基準色を作っても、適当に濃墨を引っ掛けて皿の上で適当に混ぜて描く(その場限りの墨づかい)と、墨色は安定しません。洗筆の後の水のふき取りを怠って描くと、思わぬ所に滲みが出てしまいます。
 思い通りに滲みが出てこそ水墨画です。
 意外にも、筆に慣れた人にこの描き方が多いようです。筆は達者なのに、どうも墨色が薄いとか、滲みが多すぎる場合には、墨づかいを見直すのがよいでしょう。・・・墨づかいでなく水づかいになっている可能性があります。